早河シリーズ第三幕【堕天使】
パーティー会場の外に出た相澤は莉央をロビーのソファーに座らせた。彼は傍らの壁にもたれてスーツのポケットから煙草を取り出した。
『お義母様から話は聞いていますか?』
「話?」
首を傾げる莉央を見て相澤は口元を上げた。
『お義母様……失礼、ここでは樋口会長とお呼びした方がいいですね。樋口会長からどうやら何も聞かされていないみたいですね』
「どういったお話でしょう?」
『今日は僕と莉央さんのお見合いだったんですよ』
相澤は取り澄ました顔で紫煙を吐く。
「お見合い?」
『そうです。僕の祖父も樋口会長も僕と貴女の結婚を望んでいます』
「結婚って……私はまだ高校生です。そんな……」
『もちろん結婚は莉央さんが高校を卒業されてから、祖父と樋口会長の間では貴女が19歳になる前には相澤の家に嫁ぐことで話はまとまっているようです』
「相澤さんはそれでよろしいのですか?相手を勝手に決められた結婚なんて……」
戸惑う莉央に向けて相澤は柔らかく微笑んだ。彼は灰皿に煙草の灰を落としてまた一服する。
『時代錯誤、まるで大昔の貴族のようですね。しかし現代でも上流階級層にはまだこのような慣習が生き残っている。僕はこれでも財閥の家柄です。結婚が家と家を繋ぐものであり商業的価値を得るものだと親から教育されてきました。恋愛は自由でも結婚には家の縛りがあると理解しています』
「私と相澤さんが結婚することで商業的価値が得られると?」
『莉央さんは高校生ですからまだ経営には関わっていらっしゃらない。でも貴女は頭のいい方だとお見受けしましたのでお話しますが、建築業大手の樋口コーポレーションと電子機器メーカーの相澤グループ、二つの企業が組むことで得られる商業的価値は高い。ゆくゆくは二つの会社を統合した新しい会社を設立し、僕をそこのトップに据えることが祖父と樋口会長の計画です。そのための橋渡し役が莉央さん、貴女なんですよ』
相澤の話を聞いて莉央はさらに気分の悪くなる思いだった。これまで莉央を公の場に出すことを嫌がっていた雅子が今回のパーティーに莉央を呼んだ魂胆が見えた。
(雅子さんは私を商売の道具にするつもりなのね)
樋口家の厄介者の莉央を相澤グループの橋渡しとして利用する。それが雅子の狙い。
『お義母様から話は聞いていますか?』
「話?」
首を傾げる莉央を見て相澤は口元を上げた。
『お義母様……失礼、ここでは樋口会長とお呼びした方がいいですね。樋口会長からどうやら何も聞かされていないみたいですね』
「どういったお話でしょう?」
『今日は僕と莉央さんのお見合いだったんですよ』
相澤は取り澄ました顔で紫煙を吐く。
「お見合い?」
『そうです。僕の祖父も樋口会長も僕と貴女の結婚を望んでいます』
「結婚って……私はまだ高校生です。そんな……」
『もちろん結婚は莉央さんが高校を卒業されてから、祖父と樋口会長の間では貴女が19歳になる前には相澤の家に嫁ぐことで話はまとまっているようです』
「相澤さんはそれでよろしいのですか?相手を勝手に決められた結婚なんて……」
戸惑う莉央に向けて相澤は柔らかく微笑んだ。彼は灰皿に煙草の灰を落としてまた一服する。
『時代錯誤、まるで大昔の貴族のようですね。しかし現代でも上流階級層にはまだこのような慣習が生き残っている。僕はこれでも財閥の家柄です。結婚が家と家を繋ぐものであり商業的価値を得るものだと親から教育されてきました。恋愛は自由でも結婚には家の縛りがあると理解しています』
「私と相澤さんが結婚することで商業的価値が得られると?」
『莉央さんは高校生ですからまだ経営には関わっていらっしゃらない。でも貴女は頭のいい方だとお見受けしましたのでお話しますが、建築業大手の樋口コーポレーションと電子機器メーカーの相澤グループ、二つの企業が組むことで得られる商業的価値は高い。ゆくゆくは二つの会社を統合した新しい会社を設立し、僕をそこのトップに据えることが祖父と樋口会長の計画です。そのための橋渡し役が莉央さん、貴女なんですよ』
相澤の話を聞いて莉央はさらに気分の悪くなる思いだった。これまで莉央を公の場に出すことを嫌がっていた雅子が今回のパーティーに莉央を呼んだ魂胆が見えた。
(雅子さんは私を商売の道具にするつもりなのね)
樋口家の厄介者の莉央を相澤グループの橋渡しとして利用する。それが雅子の狙い。