愛してはいけないというあなたと
 叔父家での艶子の待遇は日に日に悪化していく。

 叔母は基本的にすべての家事を艶子に振るのだ。
掃除や洗濯はもちろん、キッチンに立ったことのない艶子に、料理本を渡し指定したメニューを作れと命令された時は、とても困った。

 碌に包丁を握ったことのない艶子。
かなりの時間を要し調理していると、こののろま!早くしろ!と罵られる。
そのせいで急げば、食器を割ってしまったり、包丁で手を切ってしまったりとミスを起こし、怒られてしまう。

 それから、せっかく作り上げた料理を美味しくないと、破棄されることは日常茶飯事だった。
義母の仕打ちにショックを受け泣いてしまうと、見苦しいから泣くな!と怒鳴られてしまう。


 だが艶子を苦しめるのは、叔母だけではなかった。
美和である。
彼女の艶子の扱いはひどいものだった。

 思い付いた我儘すべて、その場で注文するのだ。

 部屋が暑ければ艶子がどこに居ようと呼びつけ、「暑いわ、エアコンの温度下げてちょうだい」と命令するし、そうかと思えば数分後に寒くなったから上げろと言う。
また、別の日には「お腹が空いたからコンビニのスイーツを十分で買ってきて」と言い、急いで帰宅すれば、もういらないと今度は他の注文をする。

 朝から夜まで美和と叔母の我儘を押し付けられ、艶子は休む暇がなかった。


 どうして自分がこんな目に遭わなければならないの……と涙が零れる。
だが、泣いていても状況は変わらない。
ウジウジとしていたのははじめだけで、徐々に感情を押し込めることを覚えた艶子。

 淡々と言われたことを行い、一日、また一日と、毎日が過ぎていく。
あっという間に夏が終わり、秋が過ぎて冬が去り、春がやってきた。
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