愛してはいけないというあなたと
叔父は寝袋をギュッと握りしめて立つ艶子に近付いて来ては、前に立った。
「……叔父様、どうされたのでしょうか?」
今は深夜一時過ぎ。
すべての家事を終え、皆の後の風呂に入るので、どうしても遅くなってしまうのだ。
普段であれば叔父は既に休んでいる時間。
一体何の用事があるのだろう……。
「艶子、大丈夫かい?」
今まで気遣われることなどなかったというのに、今夜の叔父はどうしたというのだろう。
これが初めの頃であれば、甘えてしまったかもしれない。
でも、今はとても叔父に心を開くなんてできない。
「お心遣いありがとうございます。私は大丈夫です」
艶子が真顔でそう言えば、叔父は眉を僅かにひそめ、一歩艶子に近付いた。
その目は妙に熱が籠っていて、恐怖心を感じてしまう。
「洋子も美和も酷いね」
突然同情されるなんて気味が悪い。
艶子は首を横に振りながら、一歩後退する。
「洋子は艶子に嫉妬しているんだ」
「……嫉妬?」
なぜ?と繰り返すと、叔父が艶子の頭に手を伸ばし、髪に触れた。
太い手が首に当たり気持ちが悪い。
体がゾクゾクと震え、身を縮こませる。
「洋子は優子さんに似た艶子が羨ましくて妬ましくてしかたがないんだよ。洋子はずっと兄さんが好きだったからね」
叔母が父に好意を寄せていたなんて知らなかった。
艶子は母似だ。
そう、母を知る者はよく口にする。
だからといって、艶子は母ではないのだが。
「洋子は艶子が辛ければ辛いほど喜ぶんだ」
なんてひどい――。
尋常でない扱いについて、自分なりに納得したくて、もしかすると知らないところで、自分が叔父家に迷惑をかけていたのでは、と考えたこともあった。
まさか、ただ艶子が母に似て憎いだけだとは、思ってもみないことだ。
苦しさと向き合ってきたこの九か月間はなんだったのだろう。
「……叔父様、どうされたのでしょうか?」
今は深夜一時過ぎ。
すべての家事を終え、皆の後の風呂に入るので、どうしても遅くなってしまうのだ。
普段であれば叔父は既に休んでいる時間。
一体何の用事があるのだろう……。
「艶子、大丈夫かい?」
今まで気遣われることなどなかったというのに、今夜の叔父はどうしたというのだろう。
これが初めの頃であれば、甘えてしまったかもしれない。
でも、今はとても叔父に心を開くなんてできない。
「お心遣いありがとうございます。私は大丈夫です」
艶子が真顔でそう言えば、叔父は眉を僅かにひそめ、一歩艶子に近付いた。
その目は妙に熱が籠っていて、恐怖心を感じてしまう。
「洋子も美和も酷いね」
突然同情されるなんて気味が悪い。
艶子は首を横に振りながら、一歩後退する。
「洋子は艶子に嫉妬しているんだ」
「……嫉妬?」
なぜ?と繰り返すと、叔父が艶子の頭に手を伸ばし、髪に触れた。
太い手が首に当たり気持ちが悪い。
体がゾクゾクと震え、身を縮こませる。
「洋子は優子さんに似た艶子が羨ましくて妬ましくてしかたがないんだよ。洋子はずっと兄さんが好きだったからね」
叔母が父に好意を寄せていたなんて知らなかった。
艶子は母似だ。
そう、母を知る者はよく口にする。
だからといって、艶子は母ではないのだが。
「洋子は艶子が辛ければ辛いほど喜ぶんだ」
なんてひどい――。
尋常でない扱いについて、自分なりに納得したくて、もしかすると知らないところで、自分が叔父家に迷惑をかけていたのでは、と考えたこともあった。
まさか、ただ艶子が母に似て憎いだけだとは、思ってもみないことだ。
苦しさと向き合ってきたこの九か月間はなんだったのだろう。