愛してはいけないというあなたと
 虚しくてたまらない。
悔しさから涙が零れると、叔父がそれを拭った。
途端に背筋がゾゾゾッと震える。

「可哀想に。お前はこれからも洋子から虐めらるんだよ」

 決定事項のように言う叔父に嫌悪感しか感じず、キッと睨みつける。

「悪い目だ、でも嫌いじゃない」

 叔父はさらに距離を詰めてきた。
一歩後退するも、ワインセラーにぶつかり身動きが取れなくなる。

「実は私はね、お前の母親が好きだったんだ」

「……!」

「お前を優子さんだと思って可愛がってあげたいんだ。もしお前が私のものになれば、今後洋子たちに虐められぬように守ってやる」

 ――なんてことなの……。
叔父の言うそれが、純粋なものでないことは艶子も理解していた。
下心でギラ付いた目で見つめられ、怖くて仕方がない。

「ご遠慮いたします。叔父様のご心配には及びません」

 震える声で拒ぶと、叔父の顔が歪む。

「お前は今の状況をわかっているのか?」

 叔父は皮肉っぽい笑みを浮かべ、「断われる立場にはないんだ」と意地悪な目を向ける。

「私は仮にもあなたの姪です……叔父様が望んでいるような関係を持つことはできません」

 そう言うと叔父は艶子の肩をギュッと掴む。

「別にお前と結婚するわけじゃない。抱いてやるだけだ。安心するといい、もし私のものになれば、きちんとした部屋を与えてやる。それから家政婦を雇いお前は何もしなくていいようにしてやる」

 叔父は怒り顔でそう言うと、艶子の肩にグッと力を入れた。
突然のことにバランスを崩した艶子は、床に座り込む体勢になる。
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