愛してはいけないというあなたと
朝食を食べ終え、食後の紅茶を飲んでいた時、広渡がテーブルに一枚の紙を広げた。
それは、婚姻届で広渡の欄は既に埋めてある。
「書いてくれる?」
広渡は美しい顔に笑みを作り、ペンを静かに置く。
「えっと……」
「結婚するって言ったよね?」
笑顔だが、目が笑っていないようにみえる。
「早速だけど、今日提出するよ。式は君の大学卒業後に挙げよう」
「……式?」
「結婚式だよ」
彼は当然のように言い、はいと婚姻届をさらに近付けた。
動けないでいると、広渡は艶子にペンを握らせるので、とりあえず名前だけ書く。
「あの、本当に今日これを出すのですか?」
広渡を上目遣いに見つめ、瞳を揺らす艶子。
「そうだよ。ほら、続きを書いて」
「は、はい……」
広渡と結婚するとは言ったものの、これほど急だとは想像していなかったので、戸惑ってしまう。
だが、今の自分は彼に頼ることしかできない。
家に戻れば、叔父に暴行されるだろうし、叔母たちからは虐められる。
帰る場所なんてどこにもないのだ。
これからの未来がまったく読めないものの、言われた通りに埋めて、彼に差し出した。
広渡が綺麗に埋まったそれを確認すると、満足そうに口の端を上げる。
その顔が少しだけ冷たく感じたが、すぐに優しく微笑まれたので、勘違いだと思いぎこちなく微笑み返した。
それは、婚姻届で広渡の欄は既に埋めてある。
「書いてくれる?」
広渡は美しい顔に笑みを作り、ペンを静かに置く。
「えっと……」
「結婚するって言ったよね?」
笑顔だが、目が笑っていないようにみえる。
「早速だけど、今日提出するよ。式は君の大学卒業後に挙げよう」
「……式?」
「結婚式だよ」
彼は当然のように言い、はいと婚姻届をさらに近付けた。
動けないでいると、広渡は艶子にペンを握らせるので、とりあえず名前だけ書く。
「あの、本当に今日これを出すのですか?」
広渡を上目遣いに見つめ、瞳を揺らす艶子。
「そうだよ。ほら、続きを書いて」
「は、はい……」
広渡と結婚するとは言ったものの、これほど急だとは想像していなかったので、戸惑ってしまう。
だが、今の自分は彼に頼ることしかできない。
家に戻れば、叔父に暴行されるだろうし、叔母たちからは虐められる。
帰る場所なんてどこにもないのだ。
これからの未来がまったく読めないものの、言われた通りに埋めて、彼に差し出した。
広渡が綺麗に埋まったそれを確認すると、満足そうに口の端を上げる。
その顔が少しだけ冷たく感じたが、すぐに優しく微笑まれたので、勘違いだと思いぎこちなく微笑み返した。