君は大人の玩具という。
浅野・牧ペアのオペは早い。
切開に2分、腹腔内の洗浄に4分、
ストーマ作成に10分。
そして開始20分で、
開けた傷を閉じ始めていた。
「相変わらず早いですね」
京子の後ろから術野を見ていた
渚が耳打ちしてきた。
京子は浅野と牧の手の動きを
見続けながら黙って頷いた。
針糸を縫っていく手に迷いがない。
正確で、迅速で、何より2人の
コンビネーションが抜群だ。
「はい、終わりまーす」
牧が最後の縫い糸を切って言った。
「予定通り終了しました。
ありがとうございました」
「お疲れさまでした」
手術終了。
タイマーは25分で止められた。
この2人でなければ
まず出ない数字だろう。
少なくとも、この病院では。
各々が片付けを進めていく。
牧はクーパー(はさみ)を
京子に差し出して言った。
「ありがと、きょんちゃん。
おかげで早く終われたよ」
「え、早く終わらせようとは思ってたんですか」
クーパーを受け取ってそう言うと、
「そりゃあ、もちろん」と
牧がガウンを脱ぎながら言った。
「患者さんにとって、
オペが短く終わるに越したことはないからね」
僕としてはもっときょんちゃんと
くっついていたかったけどね?
えへへ、と笑って部屋を出ていった牧に、
京子は何とも言えない感情に駆られた。
なんだかんだ言っても、
一番に患者のことを考えているのが
あの牧という男、らしい。