君は大人の玩具という。
2人は道を挟んで向かいにある公園に向かって、
どちらかともなく歩き始めた。
特に言葉はなかった。
ただ、風が気持ちよかった。
それに少し、牧の匂いがした。
それだけだった。
「あの後は、大丈夫だったかい?」
真っ暗な公園に着いて、
遠くの外灯と月明りだけを頼りに、
ブランコに腰かけた。
「はい。
教授たちは真っ青になって帰っていきましたけど」
「だいぶ効いたかな」
「相当効いてましたよ」
牧の長い脚に、ブランコは小さすぎる。
それでも足を浮かして揺れる姿が
あまりに異様で面白かった。
「ねぇ、きょんちゃん」
「なんですか?」
気付けば、もう訂正しなくなっていた。
今更、さっきみたいに呼ばれても
もうしっくりこない気がする。
京子は牧の隣のブランコで
軽く前後に揺れつつ、
牧の言葉を待った。
「僕ね…アメリカに行こうと思う」