君は大人の玩具という。
不意に出た言葉は、
紛れもなく、京子の本心だった。
「え、うそ。
いや、うそうそ!」
「私の分も留学先見つけてくれるなら、
全然行きますよ、ほんとに」
「ごめん、ごめん。
冗談だよ」
「…行きたいんです」
京子はいたって真面目だった。
牧がアメリカに行くなら、
自分も行きたい。
行けるものなら、
ついていきたい。
きっと、ずっとそう思っていた。
最初にアメリカという言葉を聞いた、
その瞬間から。
私も…って。
京子の視線に困ったように笑って、
牧は地面を見つめながら言った。
「…もう、あんな思いはしたくないんだよ。
きょんちゃんになにかあったら、
それこそ生きていけない」
自分についてきた子が、
亡くなってしまったという過去。
それが今でも牧の心で
大きな傷となっているのだろう。
それでも、いや、だからこそ。
自分でも信じ難いことだが、
京子はこのまま牧と別れたくなかった。