君は大人の玩具という。
温かい。
京子は牧の背中に手を回した。
2人の心臓の音が、
しっかりと重なるのを感じた。
「あんなに嫌われていたのに、
夢みたいだ」
「…夢じゃ、ないですよ」
自分だって、信じられない。
でも、今はこうして牧を感じていたい。
そう、心から思う今が、現実だ。
「本当に、ついてきてくれるの?」
「はい」
「後悔、しない?」
「はい」
「ずっとそばに、いてくれる?」
京子はその腕にぎゅっと力を込めた。
「はい!」
ずっと、そばにいます。
互いにまたきつく、苦しいほどに抱き合った。
絶対に離したくない。
その想いを、確かめ合うように。
月はもう、隠れなかった。
ただいつまでも、2人を見守るように、
煌々と輝き続けていた。