君は大人の玩具という。


「先輩も意地悪ですねぇ」


渚が含み笑いを浮かべて資料を整理しつつ
隣に並んできた。


「朝一で始まっても終わるの昼過ぎなんだから、
 2件もあって5時に終わるわけないのに」

「さあ、どうでしょう~?」


京子は議事録にある未読の資料に
サインをしながら言った。

今日牧たちのチームが予定しているのは
食道と胃のダビンチ手術。

本来は1日1件か、2件したとしても
17時に終わる手術ではない。

だが、牧ならやってのけてしまうかもしれない。

そうなれば看護師としては夜勤も助かるし、
残業もいらないかもしれない。

それに、どんなに急いだとしても
丁寧さを欠ける牧ではない。


「彼氏のことは、
 自分が一番わかっている、と」

「何言ってんのよ」

「え、付き合ってないんですか?
 アメリカについていくのに?」

「もうそういうのは、卒業したの」


京子は議事録のファイルを閉じて
ボールペンをポケットにしまった。


「さ、1番の導入いくよ」

「え、え…?どういうこと?」


京子の歩き出した背中を、
渚は「わからない」という顔で追いかけた。


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