君は大人の玩具という。



無事手術が終わり、
京子は細谷から引継ぎを受けて
患者を病棟の看護師に申し送った。

それからクリーンルームを歩いていると、
中央のデスクで牧がみっちゃんこと
廣瀬みのりに楽し気に話しかけていた。

というよりは、仕事の邪魔をしていた。


「みっちゃんも一緒にアメリカいこうよ!
 今なら留学と同時に、
 大人の玩具(おもちゃ)、牧先生がついてくるぞ?」

「あ、そのー…」


みのりは牧の背後に立つ京子を
気まずそうにちらっと見た。


「その言い方」

「あ!きょんちゃん!」


京子は目を細めてじとーっと
牧を睨みつけた。


「復帰されても尚、
 相変わらずのようですね、牧先生」

「あら~きょんちゃん、
 もしかしてやきもちかなぁ?」


牧がニヤニヤと京子の顔を覗く。

その隣では、椅子に座っていたみのりが
口元に手を当てて京子を見上げていた。


「千秋先輩、かわいい…」

「うん、かわいい」


牧もみのりを真似て
両手で口元を隠す仕草。

京子はすぐ前に合った足を
思い切り踏みつけた。


「ギャッ」

「…廣瀬ちゃん、
 明日の私の形成のことなんだけど…」


呻いてしゃがみ込む牧を置いて、
京子はみのりに仕事の話を始めた。


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