君は大人の玩具という。
仕事が終わって帰る支度をしていると、
更衣室に内線が入った。
京子が受話器を取ると、
まだ受付にいた先輩からだった。
『よかった~まだいて。
牧先生から電話だよ』
「え、なんでですか?」
『知らない。
ていうか、連絡先交換してないの?
わざわざここにかけてくるって、
一体どんな関係性なの?』
「本当、すみません」
なぜ自分が謝らないといけないのか
いまいち納得できなかったが、
とりあえず牧に説教しようと繋いでもらった。
『あ、もしもしきょんちゃん?
牧ですけど~』
「なんで受付にかけてくるんですか?
どうせ仕事の話じゃないんですよね」
『だってどうしても連絡したかったけど
手段がないんだもん。
いつも直接会ってたから』
たしかに。
大抵手術室で顔を合わせていたし、
連絡先を交換するという概念がなかった。
「…何の用です?」
『あ、電話に出たってことはまだそっちだよね!
迎えにいく!』
「はぁ?」
そして一方的に切られて通話終了。
「なんなの、一体」
京子は半ば乱暴に受話器を置いた。
それから着替えて更衣室を出ると、
案の定、私服姿の牧が待っていた。
「お疲れさま、きょんちゃん」
「お疲れさまです…」