君は大人の玩具という。



仕事が終わって帰る支度をしていると、
更衣室に内線が入った。

京子が受話器を取ると、
まだ受付にいた先輩からだった。


『よかった~まだいて。
 牧先生から電話だよ』

「え、なんでですか?」

『知らない。
 ていうか、連絡先交換してないの?
 わざわざここにかけてくるって、
 一体どんな関係性なの?』

「本当、すみません」


なぜ自分が謝らないといけないのか
いまいち納得できなかったが、
とりあえず牧に説教しようと繋いでもらった。


『あ、もしもしきょんちゃん?
 牧ですけど~』

「なんで受付にかけてくるんですか?
 どうせ仕事の話じゃないんですよね」

『だってどうしても連絡したかったけど
 手段がないんだもん。
 いつも直接会ってたから』


たしかに。
大抵手術室で顔を合わせていたし、
連絡先を交換するという概念がなかった。


「…何の用です?」

『あ、電話に出たってことはまだそっちだよね!
 迎えにいく!』

「はぁ?」


そして一方的に切られて通話終了。


「なんなの、一体」


京子は半ば乱暴に受話器を置いた。

それから着替えて更衣室を出ると、
案の定、私服姿の牧が待っていた。


「お疲れさま、きょんちゃん」

「お疲れさまです…」


< 119 / 145 >

この作品をシェア

pagetop