君は大人の玩具という。
「意外ですね」
京子は500Xの
助手席に乗って言った。
「てっきり、お坊ちゃまらしく
スポーツカーでも乗り回してるのかと」
「それで病院は来ないよ~
こう見えてこの車、もう10年目なんだから」
「へぇー!」
まるで新車のように綺麗だ。
大事に乗っているのがよくわかる。
京子は深呼吸して、
独り言のように呟いた。
「先生の、匂いがする」
「…」
何も返してこないのが
気恥ずかしくて隣を見た。
暗くてもわかる。
牧の耳がほんのり赤いことが。
「…なっ、なんで照れてるんですか」
「えぇ!いや、そ、それは…
そんなこと、言われたことないから」
「だからって、いつもみたいに
適当にふざけてくださいよ!」
「そんなぁ、僕はいつも真面目だよ?
きょんちゃんには、ずっと本気だから」
「…」
「…」
なんなの、もう…
いきなりの牧の態度に、
調子が狂った京子は
ただ窓の外を見ることに専念した。