君は大人の玩具という。
#9.天使




――3年前。



「じゃあねーリンちゃん!
 愛してるよー」

「あたしも~!
 また来てね、せんせっ」

「明日も来るぞい♪」

「きゃー‼」


街がクリスマスムード一式の夜。

牧はいつもの店で飲み終えて
タクシーを拾おうと歩いていた。

この年は数年ぶりのホワイトクリスマス。

雪が降り積もり、
気温は例年を大きく下回っていた。

こんな日は、解離が増える。

そんな思考に陥るのは
医療者の性なのだろうか。


「大丈夫ですか⁉」

「お父さんッ‼」


突然聞こえた声に振り返ると、
居酒屋前で小さな人だかりができている。

牧は「すみません!」と駆け寄ると、
中年男性が仰向けに倒れていた。

娘と思われる女性が泣き崩れており、
そのすぐそばではもう一人の…


「誰か救急者すぐ呼んでください‼」


娘ではない。

医療者だと、牧はすぐ悟った。



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