君は大人の玩具という。



「人が集まるなら大丈夫とのことです。
 もうすぐ着きます!」


牧は娘の背中をそっとさすった。


「すぐにオペができる医者と看護師が
 偶然にも揃っていた。
 これは奇跡だよ。
 君のお父さんは、ついている」


そう言うと、娘はまたわぁっと
泣き出しながら、何度も頷いた。


「ありがとうございます!
 よろしくお願いします…!」


そう何度も何度も言いながら。


「絶対助けてみせるからね」


看護師が不審そうに見るのも理解できた。

心停止していた患者を前に、
"絶対助ける"なんて約束は野暮だと。

だが牧には確信があった。

千秋(この人)がいたら、できる、と。


牧は目を閉じて、
先日の飛行機での出来事を思い出した。


大丈夫。

あの時とは違う。



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