君は大人の玩具という。
牧は浅野と雅俊、
それから人工心肺の用意をする増山に
ペコリと頭を下げた。
「こんな日にすみません。
偶然居合わせたものですから」
「それはいいんだけど、
勝手に僕らでやってもいいものか。
藤原君はともかくだね」
浅野が言うと、
増山も「そうだぞー」と加わった。
「これで死なせたら訴訟どころじゃ
済まないんじゃないのか?」
それを聞いていた渚も言った。
「私たちもまずいんですかね」
「そりゃそうだろ」
「えー!先輩、どうしよ!」
「まあ、師長には怒られるよね、
間違いなく。
勤務時間外だし」
でも、と京子は頭に乗せていた
ゴーグルを装着して続けた。
「絶対助けるって、
誰かさんが断言したから」
全員の視線が牧に向いた。
「だから、私はそれに懸けます」
そう言って手洗いに出た。
残された牧は目を見開いていたが、
やがて小さく笑みを浮かべた。
増山が「やれやれ」と
人工心肺の準備を進めた。
「血、降ろしておけよ。大量に」
「オーダー分全部お願いします」
雅俊も続けて言った。
渚は、全員やる気だということを悟って、
「はーい」と返事してから
輸血部門に電話をかけた。