君は大人の玩具という。
それからすぐに患者が入室した。
圧倒的に人手が足りないため、
各々が互いをサポートしつつ
準備を進める。
「挿管しておくからライン取って」
「はい!」
「レート落ちるよ」
「もう開けよう!
DC出てる?」
「出てます!」
「さっすが~」
牧はこのメンバーでの一体感を感じていた。
きっと誰もがそうだろう。
絶対助けられるという自信が湧いてくる。
牧と浅野がガウンを着て、
タイムアウト後にすぐメスを入れる。
まずは人工心肺を回す。
それさえ早急にできれば、
一先ずこの患者は生きられる。
「ライトアン…」
「はい」
牧が出した手に、
素早く器械が乗せられる。
牧は感心しつつも、
試しに手だけ出すことにした。
すると、送血管、脱血管、
カニューレ、針糸…と、
次々と必要なものが
欲しい物順に手に乗せられた。
「…やるねぇ」
牧は思わず囁いた。
「パーシャルで!」
「はい。パーシャルです」
増山がすぐに答える。
今度は麻酔科に向けて声をあげつつ
心筋保護液を入れる。
「ACTは?」
「400。
こっちは問題ないから集中しろ」
「そうでした」
こまめな確認をしなくとも、
ここに揃っているのはプロだった。
それも、牧が信頼できるプロたち。
牧は心臓外科に転科しようかな、
なんて考えつつ、
ふと京子に向かって言った。
「あれ、京子ちゃん、何年目?
まだ若いよね」