君は大人の玩具という。



「…2年目です」

「に…!?」


牧は思わずルーペ越しに京子を見た。

目元しか見えないが、
気まずそうなのがよくわかる。

だが、互いに手を止めることはない。

浅野も驚きつつ言った。


「そうだよね、まだ若いよね?
 あまりにしっかりしてて
 ベテラン感覚だったけど」

「すみません、出しゃばって」

「いやいや、すごいよ!」


浅野の返しに頷きつつも、
牧は言葉が出てこなかった。

一体どんな経験をしてきたら、
たった2年でここまでになれるのか。

牧は聞いた今でも信じられなかった。

こんな有能な看護師は、
そうそういるものではない。

牧は一気に京子に興味を抱いた。


「相当、勉強したの?」

「…はい」


そう言う間も、
牧の欲しい物を次々と渡してくれる。


あぁ、この子は、医師と同じ目線で
術野を見てくれているんだ。


だから今何が必要なのかわかるのだろう。

牧は目の前の心臓と向き合いつつ、
自分の心臓の拍動も感じていた。

久々だった。

こんな感覚を持ったのは…。

思わず漏れ出た笑みは、
マスクで人目に触れることはなかった。



< 134 / 145 >

この作品をシェア

pagetop