君は大人の玩具という。
「…2年目です」
「に…!?」
牧は思わずルーペ越しに京子を見た。
目元しか見えないが、
気まずそうなのがよくわかる。
だが、互いに手を止めることはない。
浅野も驚きつつ言った。
「そうだよね、まだ若いよね?
あまりにしっかりしてて
ベテラン感覚だったけど」
「すみません、出しゃばって」
「いやいや、すごいよ!」
浅野の返しに頷きつつも、
牧は言葉が出てこなかった。
一体どんな経験をしてきたら、
たった2年でここまでになれるのか。
牧は聞いた今でも信じられなかった。
こんな有能な看護師は、
そうそういるものではない。
牧は一気に京子に興味を抱いた。
「相当、勉強したの?」
「…はい」
そう言う間も、
牧の欲しい物を次々と渡してくれる。
あぁ、この子は、医師と同じ目線で
術野を見てくれているんだ。
だから今何が必要なのかわかるのだろう。
牧は目の前の心臓と向き合いつつ、
自分の心臓の拍動も感じていた。
久々だった。
こんな感覚を持ったのは…。
思わず漏れ出た笑みは、
マスクで人目に触れることはなかった。