君は大人の玩具という。



それから5時間。
気付けば朝を迎えていた。

無事手術が終了して、
患者をハートセンターに送り届けてから、
牧はもう一度総合外科部門の
受付に戻ってきた。

すると途端に
叫び声が響き渡った。


「一体、何考えてるのッ‼」


案の定というべきか、
受付で京子と渚が
師長と主任の前で小さくなっていた。


「危ないにも程があるでしょう!
 勝手に出勤してオペ入って、
 しかもよりによって解離なんて!」

「申し訳ありませんでした…」

「患者に何かあったら、
 あなたたち責任取れるの!?
 申し訳ないじゃ済まないのよ!」

「…怒るなら僕を怒ってください」


牧は思わず2人の隣に立った。


「無理矢理2人に頼んだんです。
 でも、彼女たちの動きは完璧でしたよ」

「いやいや、先生。
 この子たちまだ新人なんですよ。
 ご迷惑をおかけして…」

「2人のオペ、最近見られましたか?」

「え?」


師長と主任が気まずそうに
互いに顔を見合わせる。

牧はニコッと笑顔を向けて言った。


「こんな有能な子がいるなんて知らなかった。
 これからどんどん、僕のオペにつけてくださいね」


極上のスマイルなのか圧なのか、
牧のオーラが上司たちを黙らせた。


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