君は大人の玩具という。



言葉にできなくても、
伝えきれなくても、それでいい。

このチャランポランには、
そんな曖昧なことは
理解できないのかもしれないが…。

京子は今の関係が心地よかった。

それがたとえ恋人になっても、
万が一夫婦になっても、
変わることはないだろう。

京子にはその自信があった。

それは、この牧という天才な医者、
最低な男を、信じているから。

誰にも崩し得ない、
築き上げてきた絆があるから。

牧の右腕として生きてきた、
誇りがあるから。

京子は胸を張って、
堂々とスタッフステーションに顔を出した。


「皆さん、お久しぶりです!」


「おかえり」の声が飛ぶ。

それだけで、ほっと安心できる。

「はじめまして」の顔が見える。

それだけで、ワクワクできる。

隣を見れば、もう見飽きたような
まだまだ飽きないような姿がある。

それだけで、たったそれだけで、


「怖くない」

「なに?きょんちゃん」

「なんでもありません。
 いつものリガー出しますよ。
 あとケントとオクトパスと…」

「うん!いつもので。
 さっすが、僕のきょんちゃん」


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