君は大人の玩具という。



京子は干場の後ろから顔を出して言った。


「荻原先生は肝胆膵の先生です。
 こっちのもじゃもじゃは上部消化管らしいです」


おまけみたいに付け加えられて
牧は不服そうに唇を尖らせた。


「専門はそうだけど、肝胆膵もできるもん」

「次もでかいオペを控えてるしな」


荻原がこれまた白い歯を見せて笑った。

牧は上部消化管である、胃、食道の手術を
主に行うが、肝臓、胆嚢、膵臓や腸など
すべての消化器系に精通している。

荻原をはじめ、浅野や他の上級医が
認めるほどの腕であることは確かのようだ。

だからといって、京子は
牧の変態性とストーカー性質が故に、
牧を尊敬の眼では見れていない。

それは、この短時間しか牧を見ていない
干場も同様だった。


「でかいオペって?」


干場が尋ねたところで、
エレベーターが15階に到着した。

どうやら牧と荻原もランチらしい。

京子は荻原がいる手前、
渋々牧がランチに同席すること
許可せざるを得なかった。


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