君は大人の玩具という。
テーブル席についてから
(牧は京子の隣に座ろうとして断られた)、
京子と牧と荻原は和食ランチセット、
干場は洋食セットを注文した。
それから荻原が自身のスマホで
カレンダーを確認しながら言った。
「来週だっけか?今月末だったよな?」
「そうですね、来週の金曜です」
牧はそう答えつつ、京子にニコッとスマイル。
京子はおえっという顔をして
ウエイターが持ってきた水に口をつけた。
干場が「なんのオペなんです?」と聞くと
荻原は大したことじゃないという風に言った。
「スタートは食道がんだが、胃と膵臓に転移。
門脈再建と肝動脈再建も必要ってかんじだな」
「そんなに転移してても、オペを?」
干場の疑問は京子も同感だった。
食道から膵臓にかけての手術となると
かなり大きな傷になる。
侵襲度も高く、患者にとっては
かなりの負担でリスクも大きいだろう。
本来なら手術は諦めて、
内科的治療に切り替えそうなものだ。
荻原が「あぁ」と小さくため息をついた。
「本人がどうしても手術を望んでいる」
「まだ若いとか?」
「52歳だ」
「なるほど」
人生100年時代。
医療の世界では、50代はまだまだ若い。
京子は50代にして体中にがんを持つ
その患者を思うと、心が痛んだ。