君は大人の玩具という。



「お待たせいたしました、和食ランチです」

「はーい」


牧が返事をすると、
美人ウエイターがお盆を牧の前に置いた。

女の京子でも目が行くほど、
白いシャツから今にも飛び出そうな大きな胸。

それにこの牧が飛びつかないはずはなく。


「ねぇ君、名前は?」

「はい?」

「君の名前」


巨乳ウエイターが前髪を直して言った。


「たちばな、めいです」

「めいちゃんか!めいって芽が出るの芽?
 お花っぽくてかーわいいッ」

「…ゴホンッ」


京子が不快な目を牧に向けると、


「あれ、きょんちゃん妬いちゃった?」

「やくわけないでしょ?
 見てて不愉快。彼女も困ってるじゃないですか」

「そうなの?ごめんね」


牧に見上げられて、巨乳ウエイターもとい
立花芽衣はなぜか頬を赤らめていた。


「あ、いえ、私は…失礼します!」

「またあとでね、めいちゃん」


足早に去っていく後ろ姿に
呑気に手を振る牧に白い目を向けてから、
干場は荻原に言った。


「で、そのオペにはお二人が?」

「あぁ。こいつは俺と同じでタフだしな。
 ただ、ちょこっと厄介なことがあってだな」

「と、言いますと?」


続いて、京子と荻原の和食セットが運ばれてきた。

荻原は男性ウエイターに手で礼を言ってから、
似合わない小声で言った。


「がんの一部が、腹大動脈の外膜にめりこんでいる」

「ぇ…」


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