君は大人の玩具という。



次の日。

早速、スタッフステーションでは、
来週末の心臓外科と消化器外科の
合同オペの話題で持ち切りだった。


「誰がつくんだろ?」

「どうせ日勤帯じゃ終わらないよね?」

「牧先生は10時間でやりきるって言ったらしいよ」

「えー、絶対無理だよ!
 なんなら教授変わってから心外と消外って
 めっちゃ仲悪くない?」


とまあ、スタッフの噂話はこんなものだ。

滅多にない大きな手術とだけあって、
器械出しと外回りを希望する声もあれば、
回避しようとする声も上がった。

京子はあっという間にスタッフ間に
この話題が広がったところで、
干場の口の軽さを感じた。

どうせすぐ広まることではあるが、
牧へのプレッシャーを上げているあたり、
牧のことがあまり気に入らないらしい。


ま、その点は同感だけど…


京子が渚と共に係りの仕事をしていると、
スタッフステーションに噂の張本人たちが入ってきた。

看護師たちが一斉に口を閉じて振り返る。


「主任さんか師長さんいますか?」


柔らかい微笑みに柔らかい声、
存在そのものが柔らかい、浅野が言った。

主任が奥の管理者室から大きな顔を出した。

浅野とともにやってきた荻原と牧、
それに心臓外科医2人が、
主任と師長とともに
カンファレンスルームへと入っていく。

ドアが閉められた瞬間、
少しでも中の話声を聞こうと、
数名の噂話大好き看護師たちがドアの前に集合した。


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