君は大人の玩具という。



花枝の病室を出てから、
京子は牧と一緒にエレベーターを待っていた。


「患者さんの前であんなこと言うの
 やめてもらえませんか」


京子がぶっきらぼうに言うと、
牧は「ごめんね」と笑った。


「でも、きょんちゃんも僕のこと
 信頼してくれてるみたいでよかった」

「それは室田さんが言っただけです。
 べつに信頼してません。
 寧ろ軽蔑してます」

「照れるなあ」

「なぜ…」


話にならない、という顔をしたところで
エレベーターのドアが開いた。

誰も乗っていなかった。

京子がボタンの前に立つと、
ベッドが乗る広さのエレベーターで
牧はぴったりと京子の横に並んだ。


「明日、よろしくね、きょんちゃん」

「…近いです」


牧の顔面をぐいっと遠ざけると
眼鏡が皮膚に食い込んだ牧は
「イテテ」と楽しそうに笑った。


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