君は大人の玩具という。



ソファに背を預けて天井を仰ぐ。

疲れがソファに沈んでいく。

そんな京子を見てか否か、
牧は改まったように言った。


「…楽しかったよ。
 きょんちゃんとオペができて」

「いいですよ、そういうのは」

「本当だよ?」


信じてくれないもんなーと
牧は一人、小さく笑った。

だが、やや充血しているその目は
明らかに疲れていることを示している。

京子が気の利いた言葉を思いつく前に、
牧は続けて言った。


「ありがとうね」


いつも以上に、身に染みる。

そう感じてしまうのは、
京子も同じくらい疲れているからだろう。

京子は深く考えるのをやめた。


「…どういたしまして」


ふと、花枝の笑顔が頭に浮かんだ。
そして気づけば、言葉が勝手に出ていた。


「ありがとうございました。
 オペ、続けてくれて…」


助けてくれて、ありがとう。
諦めずに、やり遂げてくれて。
花枝を救ってくれて、ありがとう。

そんな思いを込めた言葉だったが、
このへらへらしたもじゃもじゃ頭に
伝わっているのだろうか。


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