君は大人の玩具という。
そろそろ帰ろうと立ち上がると、
牧が「待って」と立ち上がった。
「僕も帰るから、一緒に帰ろ?」
「調子乗らないでください。
それにミルクティー、飲まないんですか?」
まだ開けられていない缶を見ると、
牧が「あ、これね」と言って
京子に差し出した。
「お礼にきょんちゃんに渡そうと思って
朝買ってきたのを冷やしてたの。
でも、やっぱり自分で買ってたね」
遅かったかーと笑う牧の笑顔に、
なぜか喜んでいる自分がいる。
京子はその事実に驚いた。
ミルクティーを受け取って、
牧を見上げた。
正面から向き合うと、
改めてその背の高さに驚く。
いつも牧が京子に目線を合わせてくるからか、
はたまた京子が牧を見ようとしてこなかったからか…
京子はどんな顔をしたらいいのか、
どんな感情を持ったらいいのかわからなかった。
疲れすぎて、頭が回らない。
それなのに、この男は、
こんな配慮までやってのける。
どこまでいっても食えない男だ。
「あれ、きょんちゃん…?」
何も言わずミルクティーを掴む京子を
牧は心配そうに覗き込んだ。
うまい言葉が見つからない。
ありがとうって、
さっきみたいに素直に言って
受け取ればいいだけなのに。