君は大人の玩具という。
気づき始めているのかもしれない。
気づくことが、怖いのかもしれない。
牧という人物の魅力を。
一度気づいて、その沼に足を踏み入れたら
何かが終わってしまう気がする。
他の女子たちみたいに、
あのウエイトレスみたいに、
この男にハマってしまったら?
ドMで追いかけるのが大好きな牧のことだ。
きっと自分に興味をなくすだろう。
私はそれを、悲しいと思うの…?
自分で自分がわからなかった。
「きょんちゃん、電池切れかい?」
おーいと目の前で手を振る牧。
京子はミルクティーを見つめつつ、
無意識に言葉がこぼれた。
「…どうして?」
「ん?」
小さな京子の声に
牧が耳を寄せた。
「どうして、そんなに優しいんですか」
「…きょんちゃん?」
牧は誤魔化すように笑うも、
自然と笑みは消えた。
京子はぐんっと牧を見上げて言った。
「どうしてそこまでできるんですか?
私が、先生に興味がないのが珍しいから?」
牧は「どうしたどうした」と京子をなだめるが、
疲労で頭が回らない京子は
反射的に出る言葉を止められなかった。