君は大人の玩具という。
「自分に振り向かない女を落とす、
それが趣味だからですか?」
「それって随分な印象だねぇ」
牧は珍しく詰め寄ってくる京子に、
逆に近づけないでいた。
「それとも、その底なしの軽さも
全部演技なんですか?」
「そんなことないぞ?」
「私には、先生がわかりません」
京子はミルクティーを牧の体に押し付けた。
「一体何を考えているのか、
何が本心で、何が本音なのか。
いつもチャランポランで、
しつこくて、女好きで、変態で」
「チャランポランって」
「マイペースで、つかみどころがなくて
気色悪くて、人たらしで」
「まだあるの?」
「でも、でも…」
京子はミルクティーで牧をドンドンと叩いた。
「でも、誰よりも患者さん思いで、
人のことをよく見ていて
優しくて…」
「…」
「…私が好きなミルクティーを、
くれるなんて…」
京子は自分が小さく感じた。
たったこれだけのことで喜ぶことも、
こんな小さなことに拘ることも、
今までこの医者を避けてきたことも。
全部が小さくて、情けなく感じた。
子供みたいに、うまく言葉が出てこなくて
当たってしまうところも…。