君は大人の玩具という。



「私は…」


私は?
今、何が言いたいんだろう。

本当はずっと、認めたくなかった。

気づきたくなかった。


「私は、あなたが嫌いです」

「…」

「何を考えているかわからないから。
 全部が嘘に聞こえるから。
 でも、でも…」


込み上げてくる何かに、
喉が詰まって言葉が出ない。

肩で息をする京子に、
牧が優しく背中をさする。


「でも、なに?
 きょんちゃん」

「…でも、」


京子は赤い頬にミルクティーを当てた。

冷たい刺激に、目が覚める。


「でも、どうしようもなく、
 あなたを尊敬しています!」

「ッ…!」


熱と恥ずかしさで潤んだ瞳で、
牧をしっかりと捉えていた。

最低で、大嫌い。

そう訴えかけているのに、
こんなに苦しくて
今にも倒れそうな熱に襲われた。

矛盾だらけの感情で
自分がよくわからない。

何が言いたいのかもわからない。

だが、ずっと言いたかったのかもしれない。


「だから、ずっと先生のオペにつきたい。
 先生のもとで仕事がしたい」

「…うん」


牧が優しく甘い声で頷く。


「あなたに興味がない私じゃなくなっても」

「うん」

「あなたを嫌わない私になっても」

「うん」

「あなたのそばで仕事させて」

「もちろんだよ、きょんちゃん」

「追いかけてとは言いません」

「うん」

「でも、誰にも譲りたくないんです。
 あなたにとって一番の、器械出しとして」

「…きょんちゃん」


牧は子供をあやす親のような眼差しで、
京子の口に入った髪を整えた。


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