君は大人の玩具という。



二人がそんなことになっているとは知らず、
浅野と荻原、そして増山はグラスを交えていた。


「久々だよね、こういうのは」


浅野がそう言うと、
増山は「そうですねぇ」と頷いた。

増山は浅野や荻原とほぼ同時期から
東都南大学病院で働いている。

歳も2人と近く、昔からこの外科部門を
支えてきた人物だ。

荻原がカラオケの声に負けない
声量で言った。


「昔は毎晩飲んでたよなぁ」

「二日酔いでオペとか
 全然ありましたよね」

「あったあった。
 浅野はよく白い顔して来てたな」

「君が飲ますからさ」


浅野が笑いながら割って入る。

荻原は、かつてはよく飲み、
よく語り合った浅野のグラスに
ワインを注ぎながら言った。


「あのラパは今でも忘れないな」

「あぁ!ラパ胃でしょ!俺も覚えてますわ~」


増山も手を叩いて笑うのは、
10年以上前のとある腹腔鏡下(ラパ)手術の話だ。


< 59 / 86 >

この作品をシェア

pagetop