君は大人の玩具という。
二人がそんなことになっているとは知らず、
浅野と荻原、そして増山はグラスを交えていた。
「久々だよね、こういうのは」
浅野がそう言うと、
増山は「そうですねぇ」と頷いた。
増山は浅野や荻原とほぼ同時期から
東都南大学病院で働いている。
歳も2人と近く、昔からこの外科部門を
支えてきた人物だ。
荻原がカラオケの声に負けない
声量で言った。
「昔は毎晩飲んでたよなぁ」
「二日酔いでオペとか
全然ありましたよね」
「あったあった。
浅野はよく白い顔して来てたな」
「君が飲ますからさ」
浅野が笑いながら割って入る。
荻原は、かつてはよく飲み、
よく語り合った浅野のグラスに
ワインを注ぎながら言った。
「あのラパは今でも忘れないな」
「あぁ!ラパ胃でしょ!俺も覚えてますわ~」
増山も手を叩いて笑うのは、
10年以上前のとある腹腔鏡下手術の話だ。