君は大人の玩具という。



そんな盛り上がっていたおじ3人組を
ソファの角から呼ぶ、か細い声が一つ。

3人が笑いながら振り返ると、
潰れた牧をなんとか支えた京子が
助けを求めていた。

浅野は滅多に見られないであろう光景に
細い目を見開いた。


「これはこれは、珍しい」

「なんとかしてくださいよー」


京子がそう言うも、
誰も動く素振りさえなかった。

この年でここまで飲むと、
重い腰を上げるのにも時間と気力がいるのだ。

荻原が生ハムを頬張りながら言った。


「牧のやつ、最近ずっと研究と論文漬けで
 おまけにオペもいれまくって
 全然寝てなかったんだろうな」

「すごいですよね、牧先生」


増山はそう言いつつも
京子に「がんばれ~」と呑気に
手を振るばかりだった。


「増山さん、助けてくださいよ!」

「たまには優しくしてやれよー
 意外といい男だろ?」

「そうなんだよね」


京子が言うより早く
浅野が滅多に出さない大きな声で言った。


「牧くん、ホントは結構カッコいいよね?
 言ってることが気持ち悪いだけでね」

「浅野先生が気持ち悪いって言うの
 めっちゃ面白いですわー!」

「浅野もめちゃくちゃモテてたからなー!」

「…昔の話だよ」


浅野がスマートにグラスに口をつける。

増山と荻原がかなり盛り上がってきたところで
京子は大人たちに協力を求めるのを諦めた。


「はぁ~…」


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