君は大人の玩具という。



とはいえ、
後輩兼友人の渚に目を向けても、
その酒癖の悪さから
頼りにならないことは明白だった。

渚は、すっかり青白い顔をした
干場の肩を抱いて
天に向かって大爆笑をかましている。

京子はもう一度ため息をついて、
看護師技術の要領で潰れた牧を抱きかかえた。

看護師なら学生時代に必ず習う、
自分で立てない患者の立たせ方、だ。


「ほら、先生!立ってくださいよ」

「ん~…」


耳元で声をかけつつ、
座った牧の正面に立つ。

長い腕を自分の首の後ろに回して、
足の間に右足を入れ、
抱きかかえる形で立ち上がる。

これなら、僅かでも反応のある患者、
もとい酔っ払いは大抵立ってくれる。

京子は立ち上がった牧の横に並び、
なんとか肩で支えながら店を出た。


「牧先生?タクシー、乗せますよ⁉」

「たくしぃー?」


さすがにこんな泥酔者を一人で乗せるのは
運転手に申し訳ない気がして、
京子は渋々、牧の隣に乗った。

ドアが閉まったところで、
京子は行き先が言えないことに気づいた。

慌てて牧のポケットから財布を取り出し、
免許証を運転手に見せる。


「この住所まで!お願いします!」


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