君は大人の玩具という。
牧が挿管を終えて、
患者が人工呼吸器と完全に繋がったところで、
再び手術室のドアが開いた。
「クワァ…」
とあくびをしながら入ってきたのは、
オペ室一のマイペース麻酔科医、
新谷だった。
赤毛混じりの茶髪が
「ついさっき起きました」と
言わんばかりに跳ねている。
「あれ、挿管終わっちゃった?」
目を擦りながら言う新谷に、
京子は「はい、さっき」と呆れて言った。
「こやつが」
と牧を指さすと、
牧はうるっとした眼をわざとらしく向けた。
「こやつじゃなくて、
たまには"牧先生"って呼んでほしいなぁ~」
「邪魔、どいて」
「はい」
スッと退いた牧の
「きょんちゃーん」と呼ぶか細い声を背中にやって、
京子は手洗いをしに手洗い場へと向かった。