君は大人の玩具という。



京子がガウンと手袋を装着して
器械の準備をしている間に、
浅野と牧は早々とオペの準備を進めていた。

外科医によって、
無影灯の位置やモニターの位置の好みは異なる。

自分たち好みにきちんとセッティングを
してくれる外科医もいれば、
なんの準備もせず手洗いをして
後から文句をつけてくる外科医もいる。

浅野と牧はこの点に関しては
どの医師よりもスタッフからの評判がいい。

まったく文句を言わず、
オペも早くて上手い。

敢えて言うなら、
牧の無駄口が多いぐらいだ。

京子に言わせれば、の話だが。


「きょんちゃんとオペにつけるなんて
 久々だからはりきっちゃうな」


手袋をつけながら牧が言った。

京子は器械を組み立てながら言った。


「はりきれるならささっと終わらせてください。
 もう寝たいので」

「おや、それは一緒に寝よっていうお誘いかい?」

「んなわけないでしょ」


持っていたペアンで頭をはたきたくなったが、
清潔な器械をこんな男には使えないため
ぐっと堪えた。


「はい、それじゃあやるよ」


2人のやり取りを微笑みながら見守っていた
浅野が細い目を壁時計に向けた。


「タイムアウト」


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