GLORIA


ハイムは食べ終わると、配膳を片付けて、昼休みは北条セナと図書室に行った。まだ夏服のセナは渡り廊下を上履きで闊歩しながら「昼休みの少しの時間だけど勉強するぞ」と意気込んでいた。少し前まで部活動の仲間と親しかったハイムは、9月から同じ高校を受験するセナと急速に親しくなって、仲良くしている。



渡り廊下の窓から見える中庭。

長空第一中学の風景を見るのも後半年間かと思われた。



ハイムは、来春からの高校生活が少し気がかりだった。



「セナ…前田君と仲良いの?」

「前田は!中1からずっと同じクラスの腐れ縁だよ!」



ハイムは、ふと立ち止まって下を向いた。それで最近特に私にも友達みたいに馴れ馴れしいのかなと思った。



「…どしたの?」



ハイムは悩みを打ち明けた。



前田君と特別親しくするつもりは無いのだけど、それじゃ凄く失礼だよね?



セナはキョトーンとして、



「そんな事を悩んでいるの?」



と言った。



そして、右脚をサッカーボールを蹴るように空振りさせて、



「蹴っ飛ばしちゃえ!」



と笑った。



「私は中2の時に一回蹴とばして注意されたよ」



「本当に?…でも前田君って背が高くて少し怖いよ」



「あぁ!そっか!前田は中2の時は背がまだそこまで高くなかったんだ!」



「どうしよう」



「う~ん!思い切って仲良くなってみたら?」



「えぇっ?!」



「思い切って仲良くなりなよ!思い切ってハイムから話しかければ怖くなくなるよ!」



「…あぁ~そんなものかな~…わかった!やってみる!」



セナは、ハイムの本当は気さくな性格を見抜いてアドバイスをした。皆で長空北高校に合格すれば行った先で同級生になるかもしれない。仲は良い方がよかった。



ハイムは、



「音楽について聴いてみる!」



と言って笑った。
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