恋をするなら俺として?

夢を語ってくれたひと

 高校に入ると周りの女の子たちは勉強もそこそこに美容やお洒落、恋愛にも大忙しに見える。
 
 私はと言えば、図書室で借りた本を読んだり、学校帰りに大きな書店へ立ち寄っては書籍の流行を追ったりと、活字が目で追えれば幸せなのは昔から変わらない。
 
 いわゆる本の虫である。

 美容もお洒落にも恋愛にだって、興味はある。
 けれど残念ながら私の体はひとつしかなくて、読書以外にも何かに夢中になることなど考える余裕もない。

 とは言え、寒い冬が近づいてきて、リップクリームくらいは手元に欲しい季節。
 
 よし、少しは色づくものでも買ってみようか?
 はたまたやはり保湿重視だろうか?

 そんな思いを巡らせながら、夕食前に近所のドラッグストアへと足を運んだ。
 開いた自動ドアを通り抜け、さくっと歩みを進めてリップクリームを求めキラキラ眩しいコスメコーナーを通り過ぎようとしたときだった。

 うちの学校の制服の男子が一人、コスメコーナーで商品を見つめている。
 その姿を見て私は思わず足を止めた。

 (一ノ瀬(いちのせ)くんだ……)

 クラスメイトでクールなイケメンとして校内でも有名な一ノ瀬海(いちのせかい)くんだったからだ。
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