一夏夕涼み
1章 文香 編
今宵も木の葉雨が降る1月の東京都、足立文香とその母足立真帆が住むアパートは、襖から入る僅かな隙間風と言うよりは、ポッカリと穴の空いた心を斬りつけるような隙間風が吹くアパートの一番端の部屋に居を構えていた。
文香は都内の高校に通うJKだ、しかしシングルマザーの真帆の負担を減らす為、バイトに明け暮れ、遊ぶ余裕も無く男友達すらいない状況だったのだ。
文香は都内のファミリーレストランでアルバイトに勤しんでいた、そんな文香の唯一と言っていいほどの友達、水原桜は文香が勤めるファミレスの同僚でありクラスメイトだ。
桜は文香よりも一回り背が低いが大人っぽく、言葉では出来ないオーラがありいるその発言や言動には皆を納得させる説得力があった。
文香は密かに桜のことを先輩や先生親の様に信頼している。