一夏夕涼み
7章 文香 編
JR高知駅の改札を潜る。
真帆の姉の足立梨花が優しく出迎えてくれた。
「一夏の間お世話になります」
丁寧にそう挨拶し梨花のワゴン車に乗り込んだ、車の中特有の酔いそうな匂いがする、それがどこか懐かしく落ち着いた。
高知市の街並みは東京のように騒がしくなく、ゆっくりと一夏過ごせような予感がした。
小さな町を抜けると、そこには太陽の光が反射してキラキラと輝く海原が広がっている。
そんな光景に文香はすっかりと目を奪われた、 桂浜沿いを走っていると文香は1人の少年に目が止まった、熱心に何かをスケッチしているようだった。
そんなことをしている間に車は住宅地へ入り梨花の家へと辿り着いた、梨花の家は一軒家でリビングからは海が見れるようになっている。