一夏夕涼み

9章

　二人は龍頭岬で出会った。

水平線の上に轟々と揺らめく巨大な夕日が二人の背を照らしていた。

大志が浜辺の流木に腰掛け、スケッチブックを広げて何を書くと言うわけでも無く白い紙を見つめていた。

明日から夏休みか、、、俺は部活に入っていないからその分沢山スケッチが出来るのに、上手く集中出来ない。

今頃みんなは学校で部活してんだろーな。

クソッ自分で選んだ道なのに、一人でこうしていると考えてしまうな、本当はみんなでワイワイしたいけれど、それでも俺が自分で決めたんだ、この夏休み、しっかりしよう。

スケッチブックにペンを走らせていると、この時間人が少ない砂浜を少女が歩いているのを遠くに見つけた。

珍しいな、、、この時間帯は学校の奴は部活をやっているはずなのに、段々と近づいていく人影は大志と同じ様な孤独の影を感じさせた。

暗いとか明るいとかではない、魂がまとっている空気の様なものを大志は感じ取っていた。

少女は大志に近づいたと思ったら足を止めることなく通りすぎて行った。

少女が大志の前を通り過るその一瞬が大志にはとても長い時間に感じた。

肩よりも少し長い艶やかな黒髪、淡い水色のレースのワンピース、サンダルを持つ白い腕、砂と海水を纏った人形の様な素足。

少女を間近で見た大志はしばらく息をするのも忘れてしまっていた。

なんなんだこの気持ちは、世界が一瞬止まってしまった様な気がした、あの子は誰だろう？

大志は立ち上がり遠ざかっていく彼女の後ろ姿を見つめていた、躊躇うことなく大志はその後ろ姿に向かって叫んだ。