一夏夕涼み

毎晩家に帰宅すると机に向かってアイディアを描いてはまた描くを繰り返す、そしてスマホが鳴る。

「明日の用意ってなんだっけ?」

直輝と真也からの些細なメールだ、2人は保育園からの親友で今でも仲が良い同じ高校に通うクラスメイトだ。

大志は抜群のセンスと集中力とルックスをもつ真面目ではないのが玉に傷だが、大志の真っ直ぐな姿勢や志しで生徒や先生からの信頼は厚いのだ。

しかしそんな大志でも悩みはあるのだ、レディースのファッションデザイナーを目指している大志は、作った服を着てくれるモデルやその服を評価してくれる人が居ないのだ。

お母さんにはデザイナーと言う不安定な仕事を目指していることを隠し、県内の大学へを目指すと嘘をついている。

大志はある事件に巻き込まれ、少女を傷付けてしまった過去がある、それによって自分からは女性に近づかない様にしてるのだ。

しかし大志の夢であるファッションデザイナーを諦めるわけにはいかず、隠れる様に1人部屋にこもって毎日服作りをしているのだ。

それを知っているのは直樹と真也だけであった後は大志の担任の樋口先生だけであった。

大志は今宵も新しい服を生み出し誰にも着てもらえず、見てもらえず少し寂し思いをしながらベッドに向かうのであった。

しかしある憧れを持ちながらベッドの上で目を瞑るのだ、そういつか自分の服を着てくれるモデルの様な人と出会えると言う憧れを。



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