声が出た暁にこの想いを君に
靴を脱いで、適当に荷物を置いたわたしは、玄関に立つ彼に、『待ってて』と掌を向ければ、小さく頷いてくれた。
わたしは髪と服がなかなか湿っているけど、
彼は水が滴る、と言うよりもはや全身に浴びてしまっている状態。
早く準備せねば……
バタバタと風呂のスイッチを入れ、すぐにタンスへと走り、お目当ての引き出しを漁る。
──確か、オーバーサイズの服が……この辺にあったような……あっこれだ。
ダボっとして部屋着にしようかと買っておいた物だ。
あとは大きめのタオルと小さいタオル……っと新聞紙、新聞紙……
家のなかを走り回って、わたしは玄関の彼にタオルをかけた。
床には新聞紙とタオルを敷いて、『肩のバッグここ』とゼスチャーして見せると、彼はバッグを置く。
「……ん」
随分と水を吸い込んだショルダーバッグが置かれれば、泥混じりの濁った水がタオルに染み込んでいった。