声が出た暁にこの想いを君に
十五分ほどが経った頃、脱衣所の扉が開き、彼がタオルを肩に下げながら出てきた。
座っているわたしを見据え、こちらにゆっくりと歩いてくる。
「お風呂、ありがとうございました。……あと、服も。汚れた俺の服は、ぶちこんどきました」
わたしは指で丸を作り、自身の濡れた服を手に脱衣所へ行き、彼の服と一緒に洗濯機へ。
スタートのボタンを押して戻れば、今さっき淹れた珈琲を飲む彼の姿が。
──躊躇なく飲んでる……
別に何かいれたとかじゃないけど。
警戒心みたいなのが強そうな感じだったから、あっさり飲むとは正直思っていなかった。
わたしの視線に気付き、彼はマグカップから口を離す。
「……座ったらどうですか。そうまじまじと見られても困りますので」
彼の言葉にハッとして、わたしは棚の方へ走り、棚の上を見上げた。
悠長に、見てる場合じゃない。
傷をなんとかしないと。
でも、小さな救急セットは棚の上で。
──届かない……