声が出た暁にこの想いを君に
そんな、職に加えて住むところも……
だけどそこまで深く悩んでいないように見えるのは、大人の余裕っていうやつなのかな。
「……あ、ちょっと紙とペン貸してくれます?」
『えっと……』
唐突に言うものだから、キョロキョロしてしまったけど、固定電話のところのメモを思いだし、一枚破ってペンと一緒に渡した。
一体何を……と思うも、彼が書き終わるのを待つ。
「……はいこれ」
すっと、テーブルの上で紙をスライドさせわたしに差し出された紙には、彼の携帯の番号と名前が書かれていた。
"090………… 若生 暁(わこう あき)"
──暁、さん。
不思議と名前を知った感動みたいなものがあって、書かれた名前を眺めていた。
だけどすぐ、彼はわたしのボードを手に取り、書いてあった言葉を消して、わたしの前に置いた。
「貴方の名前は?差し支えなければ教えて下さい」
わたしは迷うことなく、ボードへ自分の名前を書いた。
【島影 小夜子 しまかげ さよこ と読みます】
「……ふうん」
──番号、書くべきなのかな?いや、でも……
悩むわたしの前に、彼は携帯の画面を見せてきた。
「はい。確認のために俺のプロフィール。偽名でも嘘の番号でもないでしょう」
……うん、確かに。合ってる。
紙の書かれた番号と画面の番号を交互に見て確認したわたしは、指で丸を作る。
そしてタイミング良く、洗濯終了のメロディが部屋に響いた──