声が出た暁にこの想いを君に
──無事乾いた服に着替えた彼を、玄関前まで見送る。
若干湿っているバッグも、靴も、嫌々に身に付けた彼はわたしに振り返った。
「色々とご面倒かけてすいません。おかげで助かりましたよ。ありがとうございました」
小さく頭を下げる彼に、わたしは笑顔を返す。
──雨の音がしなくなったから、やんだのかな。
……怪我、早く治るといいけど。
彼の顔をみるとこちらまで痛々しくなる。
「……何です?寂しくなりました?」
『えっ』
そういうつもりは……ただ、顔に傷が残らないといいなと思って、表情にだしてしまったかもしれない。
ぶんぶん、と横に首を振れば、
"んな全否定しなくても……"と彼はわたしを軽くにらむ。
そしてゆっくりとドアノブに手をかけて、わたしを見据えると、
「もう会うことはないと思いますけど……ま、頑張って下さいね。それじゃ、失礼します」
ふわりと笑って、帰って行った。