声が出た暁にこの想いを君に
卒業後、わたしの進路は一応社会人としての道。
学童保育支援員のサポート──
母の知り合いから勧められ、人手が足りない時や、産休を取る職員の欠員対応のバイト。
資格を持たないわたしでも出来るということで、紹介してもらったのだ。
子供を相手に仕事をするという意味では楽しみでもあるが、バイトと言えど責任がある仕事。
同じ年代の子達が社会へと一気に放たれる環境に置いて、今のわたしには子供相手、というのはまだ心は軽い。
コミュニケーションの取り方が大人より断然純粋だから──
「……ですので、卒業生の皆さんにはこれから明るい未来があることを心から祈っております」
校長先生の話が終わりに近付き、涙する者もいれば、涙を堪える者もちらほらと居て、
鼻をすするような音も聞こえてくる中、
わたしはふと喉に手を当てた。
"明るい未来"……
高校生のうちに治るであろうと言われた
『声』
結局、卒業をむかえた今も出ないまま。
声を失くしたままのわたしに、
声を取り戻せる明るい未来は
いつくるのだろうか──
そう思うと、
泣けなかった。