声が出た暁にこの想いを君に
「敬語は……仕事でもそうですけど、癖みたいなものです。礼儀正しさは別として、敬語で話されて嫌な気にはあまりならないでしょう」
"まだ昨日今日の付き合いですし"と、彼は言う。
確かに悪い気はしないけど……
「別に貴方に気を遣ってるとかじゃないですけど、何か気にしてるようなので、少し素で話すことにしますよ」
素、とはどんな感じなんだろう。
彼が何か言ってくれないかと、待っていれば、紅茶を飲む彼の目が細められた。
「……何です。あからさまに目、輝かせんな。話題なしに何を話せって──」
ぐぅぅ……
中々大きく彼の腹の虫が鳴った。
沈黙が訪れ、彼は項垂れる。
「そういや、昨日の夜から何も食べてなかったんだ……さっきは雨のせいで店探すどころじゃなくなったんで」
昨日の夜から……それは良くない。
──何か簡単なもの作れるかな。
冷蔵庫の中身を思い出しつつ、立ち上がるわたしを彼は止めた。
「ちょっと待ってもらっていいですか」
そして携帯で何かを調べだす。