声が出た暁にこの想いを君に




──しばらくして聞こえてきた寝息に安堵して、わたしは静かに隣の部屋へ向かい、溢れたままのお茶を拭いた。



なるべく音は立てないよう、マグカップもうるかすだけにして、彼が起きた時にと水のペットボトルをベッド横にそっと置く。






──寝顔まで綺麗……





なんとなく一礼して隣の部屋でようやく座った。





──ゲームはお預けね。



ゲームの電源を消して、コントローラーを片付ける。




さっきまで元気だったのに……昨日今日で雨に濡れたせいだよね。



もし、ネカフェの個室で今みたいになっていたら、きっと彼は自分をそのままに寝るだけだったかもしれない。

雨に打たれていた時みたいに。





そう思うとわたしと居る途中で良かった、って言うか……不幸中の幸いと言うべきか。






──とりあえず、起きるまでに体温計と……あと薬。




棚の引き出しをいくつか開ければ、体温計はすぐ見つかった。


薬は……少しだけ残っていて、これまた一安心。




薬の裏面を確認して"食後"と書かれていた注意書きに一人頷いて、彼が起きるまで読書をして待つことにした。








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