声が出た暁にこの想いを君に
──はぁ……
あまり集中が続かないせいか、いつも途中で放ってしまう小説を丸々一冊読み終えた。
寝ている彼を時折確認したりしながらの読書だったけど、彼が動いてる様子はなくて。
今も──
『……ん』
小さく聞こえた声に、わたしは静止した。
『どこ……行った……』
──起きた……
暗い部屋にさりげなく顔を覗かせれば、こちらの部屋の明かりのおかげで顔が見えたのか、彼がわたしの方に手を伸ばした。
手招きするわけでもなく、宙に浮かせてすぐにパタッと落ちた手。
体温計と薬を持って歩み寄り、すぐにその二つをベッド横に置く。
「……今、何時ですか」
薄暗い部屋の中で、夜の九時。
つまりは二十一時の
二と一を指で示せば、
「もうそんな……?三時間以上寝てたのか俺……」
はぁ、と大きな息を吐いた彼。
「……タクって帰って方良いですよね。もう少ししたら呼んで帰るんで、ちょっと待っ──」
喋る彼に構わず、わたしは彼の額の熱さを確かめる。
だが、たかが三時間。
手のひらから感じる熱さに体温計を差し出すと、黙って彼は起き上がり体温計を脇に挟んだ。
体温計が鳴るまでに時間がある。薬も飲んでない彼に、薬と一緒に食べるようなゼスチャーを見せれば、
「……食えると思います。熱あるだけで食欲はありやがるみたいです俺」
──それは良いことだ。
待ってて、と伝え頷いてくれたため、わたしはキッチンへ向かう。
読書の合間に額のタオルを濡らしかえながら、うどんを茹でといたのだ。食べても食べなくともいいように。
薬を飲むためには何かしら食べないといけないし、うどんならお腹に優しいはずだから──