声が出た暁にこの想いを君に
出来たうどんを彼に運んだ時に渡された体温計には、三十八度六分。高熱だった。
「……どうりでフラフラするわけですよね。熱なんてここ何年も出たことなかったんですけど」
うどんをすすり、順調に食べ進める姿を見るに高熱があるようには余り見えないけど……
この数字が今の彼の状態。
タクシーを呼ぶにしても、いく先のネカフェでは窮屈な姿勢になるんじゃ……
休まるのも休まらない気がするのだけど。
彼はきっと、食べて薬を飲んだら帰るって言うだろう。
彼がそうしたいなら無理にひき止めはしない。
「……ご馳走さまでした。この薬、飲めば良いんでしょう?」
水を手に、彼は薬を飲んだ。
「にっが……」
ペットボトルの蓋を閉めながら、不味さを顔に出す彼。
薬だから仕方ないと思い、わたしは苦笑いをして食器と、桶の水を片付けにいく。
すでに氷の溶けた水を流し、食器を洗う。
──水のボトルと薬のストック持たせたほうがいいよね。今から薬買って帰れそうな体じゃなさそうだし。
手を拭いて、薬を何袋かまとめて紙袋へと入れ彼の荷物横に置いた。
後は彼が帰る準備を……ん?
「……すぅ……」
部屋を覗けば、聞こえる寝息。
──寝……てる?
布団をかけず寝る彼に、あの後すぐ横になったのだとわかった。
近付いて布団をかけると、なんだかほっとしてしまった。
──タオル、持ってこなきゃ。